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プロが伝授!知っておいて損はない「お金の話」
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コラムVol.50

人生100年時代:改めて「お金とは何か」から考えてみる

佐貫 総一郎 (さぬき そういちろう)

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、2級キャリア・コンサルティング技能士(国家資格)・産業カウンセラー。1981年、慶應義塾大学経済学部卒後、三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入社。個人財務相談、事務要員の算定、証券、年金、相続などのさまざまな業務を経験、支店次長、財形事務センター長などとしてマネジメント業務にも携わったのち、ライフプランセミナー講師を務めた。三菱UFJ信託銀行を退職後、オール・アセット・アンカー(株)を設立。ライフプラン・マネープラン・キャリアプランなどの支援や働き方改革の関連などでの執筆・セミナーなどで活動中。著書に『現場からはじめる働き方改革』(共著)(2019年3月発刊・金融財政事情研究会)がある。

改めて「お金とは何か」から考えてみる

2019年10月から消費税率が10%に上がりました。飲食料品の軽減税率により、テイクアウト・外食・宅配などの税率の違いによる混乱を感じる場面もまだあるかと思いますが、日常生活や仕事において徐々に慣れていっている過程かもしれません。消費税の引き上げというタイミングも踏まえ、家計の見直しを考えた方も多いかもしれません。
ところで、「お金ってそもそもいったい何だろう」などといったことを考えてみたことがあるでしょうか。消費税の引き上げに併せてキャッシュレス化の推進も図られていますが、お札や硬貨をイメージすることもある「貨幣」という言葉が、「お金」という概念と距離を持つような感覚もあります。その点も含め、そもそもの「お金」の概念を頭の中で一度整理してみるのもいいでしょう。

「お金」とは

「お金」は、経済の用語としては、「通貨」「貨幣」などといわれ、以下の3つの機能を併せ持つものとされています。

「価値の尺度」・・・経済的価値を客観的に数字で表すもの

「交換の手段」・・・物々交換でなく「もの」やサービスの交換に用いる媒介物

「価値の保存」・・・価値の貯蔵手段(交換の対象物のように劣化しない)

私たちが、日常の中で、「お金が足りない」「お金を貯める」などと話をしたりする際には、このような機能が前提となっています。
何かを買うときに、価値の尺度としての価格と自分の持つ「お金」との関係を考え、必要なものを「お金」という交換の媒介物により手に入れる。労働の対価などを「お金」という客観的な尺度の貯蔵手段で貯蔵する。そして、将来の「もの」やサービスとの交換のための客観的な尺度として貯蔵された「お金」との関係で生活などを考え行動につなげるといったことを日常から行っているわけです。

「価値の尺度」への感じ方を考える

このような「お金」の機能を前提にするとき、私たちが「お金」を使うにあたり、どんなことを考え、どんな感覚で行動しているのかを考えてみます。
私たちは、常に「価値の尺度」と対面しているとも言えます。同じペットボトルのお茶を買うのに違う自動販売機で買ったら値段が高く損をした気分になることがあれば、灼熱地獄のような日に近くの自動販売機で10円高いペットボトルのお茶を買ってもさほど気にならなかったりします。その時々の状況や感じ方が自身の「価値の尺度」への感じ方を変えることがあるということです。客観的な尺度と自身の感じ方の揺らぎを認識することも大事でしょう。高額な商品に対する感覚はよりその度合いが大きいかもしれません。
ところで、企業側(売り手)は消費者(買い手)に「いかに買わせるか」を考えています。テレビのCMや広告は購買意欲の喚起を図るためのものです。スーパーやコンビニでも、客単価を向上させる工夫が散りばめられています。まとめ買いでの単価を下げるとか、同時購入を促す商品の陳列やレジ横の商品陳列などで購買意欲を喚起したりします。「いかに買わせるかの工夫」により客観的な尺度への感覚が揺らがないよう、本来の「お金」の使い方の優先順位を崩す罠に陥らないような心持ちが必要とも言えます。「お金」を使う場面では、価値の尺度という視点を落ち着いて考えることが必要でしょう。

「交換」と「保存」の綱引き

私たちは、常に「お金」について、「交換」と「保存」のどちらの機能を選択するのかを迫られているとも言えます。「ショッピングとかでパッと使うのが楽しみ」という人もいれば、「貯めることがひそかな喜び」といった人がいるように性格や価値観による違いもその選択に影響します。「交換」と「保存」への欲求がどの程度の強さで顔を出しそうかも一度考えてみるといいでしょう。また、更なるキャシュレス化の方向がお金の使い方について計画性の欠如を招く可能性なども認識のうえ、少なくとも「交換」にあたっての以下の3つの「ム」を排除する意識は改めて持ちたいところです。

●ムリ(無理):計画性の欠如・収支状況などへの無関心

●ムダ(無駄):必要性の判断の欠如

●ムラ:TPO(時間・場所・場合)による揺れの多さ・場当たり・衝動

また、時間的な観点からは、「今、新たな交換物を手に入れること」と「将来を見据えた保存」の間で、現在と将来での幸福感や充足感あるいは安心感などを綱引きしていると言えます。その際には、「お金」についての「稼ぐ(もらう)」「貯める」「増やす(または殖やす)」「使う」などのステージを考えた将来展望を意識しながら行動していると考えられます。状況によっても変わってくるでしょうが、このようなステージへの意識も含め、「お金」の機能である「交換」と「保存」の間の綱引きへの着地点を自身がどう結論付けているのかチェックしてみるといいでしょう。

「お金」に関するステージ(イメージ例)

「価値の保存」の意味

さて、「お金」についての機能のうち「価値の保存」ですが、「お金」との交換の対象物が手元に置いておいていたら劣化していく(例えば、野菜など)のとは違い、「お金」自体は朽ちてなくなるというわけではないということです。
考えておきたいのは、貯蔵手段としての劣化がなくても、「お金」と交換物との間の価値の尺度の変化は生じるということです。長い目で考えると、「お金」と「もの」の相対的な価値に変化があり、例えば、インフレといった「もの」の値段が継続して上昇するような状況では、「価値の尺度」として表された価格の上昇により、一定の「お金」を使って手に入れられるものが減少するようなことにもなるわけです。

このように「お金」の機能を理解し考えを進めていくと、インフレ状況への準備などといったことへの考えを馳せる必要にも至るはずです。そして、長期的な視点での投資による資産形成へ踏み出す必要性も見えてくるのではないでしょうか。

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