津村記久子×三菱UFJ信託銀行 書き下ろしショートストーリー

第8話

40代からの将来の夢(中)

「楽しみなこと、ひとつ」

第8話 40代からの将来の夢(中)

友恵も夫も、両親があればあるだけお金を使ってしまうタイプなので、自分たちは高めの掛金でお金を積み立てておこうというのは結婚当初から決めていた。年金が入る年になったら2人でアルゼンチンにサッカーを見に行くのが夢だ。

教室には今週、3件の新しい申し込みがあって今までの広さの会議室では手狭になる、というのが悩みといえば悩みだった。もっと広い部屋を借りようとすると、その分使用料が増える。月謝の収入も増えるので、教室の使用料についてはなんとかなりそうだったが、食事をときどきおごったりする以外はほぼ無償で手伝ってくれている友人の真智子の負担が増えるのが気にかかった。自分は趣味だからべつにお金にならなくていいとしても、彼女にはもうちょっとお礼ができないかな、と友恵は考えていた。

結婚後も仕事を続けていた真智子は、まだ小さい息子がぜんそくを患っているためフルタイムの仕事は辞めることになった。パートに出る以外はほとんど家にいるらしく、日曜に夫やその両親に息子を預けて教室を手伝いにくるのがよい息抜きになっているらしい。真智子はスペインに留学していたこともあるので、むしろ自分よりこの教室の代表をするには適任だと友恵は考えていて話をしたのだが、今のところは事務までこなすのは難しいかな、とのことだった。10年、いや15年とか経ったら、息子のぜんそくもおさまっていて違う状況になってるかもしれないから、その時にね、と真智子は言っていた。

十数年後の話をする人はもう一人いた。知り合いのピリさんの夫の弟の娘であるマルタで、4歳の彼女は、大人になったらここで働けたらうれしい、と友恵に何度か言っていた。十数年も経ったらマルタの気も変わっているだろう、というのは常識的な考えだったけれども、だからといって今彼女の考えを聞き流してしまうのはいやだった。

Check「高めの掛金」

つみたてNISAの上限は毎年40万円。1人月約33,000円が限度です。自分が続けやすい金額でコツコツ目標を持って続けることが大切です。

津村 記久子(つむら きくこ)
1978年大阪府生まれ。2005年デビュー。著書に「この世にたやすい仕事はない」(新潮文庫)、「ディス・イズ・ザ・デイ」(朝日新聞出版社)、「やりたいことは二度寝だけ」(講談社文庫)など多数

ご留意事項

・本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。

・本稿に掲載の情報は、すべて執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。

・本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。

・本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。

・本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。